大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

徳島地方裁判所 昭和61年(わ)47号 判決 1986年7月08日

本籍

徳島県徳島市沖浜町北畑四八三番地

住居

右同所同番地

会社役員

河口雅治

昭和一〇年四月一四日生

右の者に対する相続税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官広瀬勝人出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

1  被告人を懲役一年二月及び罰金一八〇〇万円に処する。

2  この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

3  右罰金を完納することができないときは、金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、実父忠三郎の死亡により同人の財産を他の相続人と共同相続した者であるが、西林聰、池田富治と共謀のうえ、架空債務を計上するなどして課税価格を減少させる方法により相続税を免れようと企て、昭和五九年七月九日、同市幸町三丁目五四番地所在の所轄徳島税務署において、同税務所長に対し、被相続人河口忠三郎の死亡により、同人の財産を相続した被告人の正規の相続税課税価格は四億九五八六万六〇〇〇円であったのにかかわらず、右忠三郎のものである預貯金、有価証券三一四六万七七三八円を除外するなどした上、右忠三郎には、西林が代表取締役の五富興業有限会社に対する一億五〇一二万二〇〇〇円及び被告人池田に対する三〇〇四万円の各債務があるので、取得財産の価格からこれらを控除すると被告人の課税価格は二億七二三一万二〇〇〇円となり、これに対する相続税額は七一一七万四〇〇〇円である旨の虚偽の相続税申告書を提出し、もって不正の行為により被告人の正規の相続税額一億七六六八万二五〇〇円と右申告税額との差額一億〇五五〇万八五〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する昭和六一年二月一三日付、二月一四日付、二月一八日付(二通)及び二月一九日付(二通)各供述調書

一  分離前の相被告人西林聰の検察官に対する昭和六一年二月七日付及び二月一三日付各供述調書

一  分離前の相被告人池田富治の検察官に対する昭和六一年一月三〇日付、同年二月七日付、二月一二日付、二月一七日付、二月一八日付及び二月一九日付各供述調書

一  中川久子、河口治、日下彰宏、後藤弘、紀本文昭(二通)、近藤利樹、山田重則、穴吹晄宜、湯浅英子及び伊丹一郎の検察官に対する各供述調書

一  森アイ子、中野勝明、芥川輝幸、伊丹一郎及び高瀬順次の収税官吏大蔵事務官に対する各供述調書

一  福田恭、山田卓志、尾上祥司、堀和義、小笠司朗及び福井哲男各作成の証明書と題する書面

一  国税査察官作成の調査報告書二通

一  押収してある相続税の申告書等一綴(昭和六一年押第二五号証の三)、預り証等一綴(同押号の八)

(法令の適用)

被告人の判示所為は刑法第六〇条、相続税法第六八条に該当するから、懲役刑及び罰金刑を併科することとし、所定刑期及び罰金額(情状により同条二項を適用し、免れた相続税の額に相当する金額以下とする。)の範囲内で、被告人を懲役一年二月及び罰金一八〇〇万円に処し、刑法第二五条第一項を適用し、この裁判確定の日から三年前右懲役刑の執行を猶予し、同法第一八条により、被告人において右罰金を完納することができなかったときは金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 曽我大三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例